きみはプロの仕事を見たか『伝染歌』

邦題:『伝染歌』

原題:

原作:『伝染歌』 秋元康

伝染歌 (講談社文庫)

伝染歌 (講談社文庫)

製作会社:松竹 ジェネオン・エンタテインメント

監督:原田眞人(『 KAMIKAZE TAXI 』『金融腐食列島 呪縛』)

脚本:羽原大介 原田眞人

出演:松田龍平 大島優子 伊勢谷友介 堀部圭亮小山田サユリ 池津祥子 遊人 阿部寛

日本公開:2007年8月25日(土) 

参考:『ダウンタウンごっつええ感じ 音楽全集』

ダウンタウンの ごっつええ感じ 音楽全集

ダウンタウンの ごっつええ感じ 音楽全集

こんな会話があったのでしょう。「 AKB 48 をそろそろどうにかしたいんですよ、最悪は大島優子だけでも」「わかりました。原田組はプロフェッショナルですから、オーダーには応えます。ただし条件があります」「条件、とは?」「わが息子”遊人”こと原田遊人をオイシイ役でキャスティングします」「なるほど、構いませんよ」「あとサバゲー好きだからサバゲーシーン入れます」「……わかりました」「それでは」「それでは」秋元康さんは原田眞人さんのおヒゲを、原田眞人さんは秋元康さんのアゴ下のタプタプをそれぞれ撫で回し、現代における”血の契約”を交わしたのでした。そうに違いありません。というわけで感想ですが、なんか普通に観れました。ぼんやりとした事前情報と、公開後のメタクソに書かれた感想をネットで読んで、ガラガラの劇場に駆けつけました。「歌えば、死ぬ」と言う都市伝説を追うのですが、これ「じゃあ歌わなければいいじゃない」となりますよね?たとえばこの映画の元の元の元の……だいぶ元の『リング』は「見ると死ぬ呪いのビデオ」ですから、偶然見ちゃったという展開があるし、なによりフックが強いですよね、”死ぬって、なにが映っているのだろう?”思わず前のめりになる感じ。「歌えば、死ぬ」のフックの弱さ、入り口の弱さはそのまんま出口(都市伝説の真相)の弱さにつながってゆきます。このあたり上手いなと、熱量の分担がうまいなと。その歌というのが、10年くらい前にそこそこヒットした曲というのです。じゃあだいぶ知ってる人いるじゃないか、その歌もフルコーラスなのかワンフレーズなのかという明確なルールが無い、だからそれを破れない。しかも観客がその歌を、それとしてはじめて聴く場面で、伊勢谷友介さんに歌わせているという大冒険の大失敗。いまのところ発声が気の毒な印象を受ける伊勢谷友介さん(しかしこれが年齢を重ねれば味になるのです、きっと)ですので、音程ももうひとつ。その歌がどんなメロディーなのか歌詞なのかがイマイチ、イマニ、イマサン(以下延々と続く)。主役はアングラアイドル AKB 48 の大島優子さんで、映画が始まってすぐは女子高校の風景(「セックス」発言で場を支配したりします)が描かれ、誰が主役なのかハッキリしません。ああ大島優子さんが主役なのかとわかってから、自分の中で巻き戻してどんな初登場だったかと思い出すと、トライアスロン部の朝練で鼻息荒く人一倍がんばり、チームメイトをがんばらせる煮っ転がしみたいな女子だったとなり、この先観続けるのが辛いかもわからんとなりました。でも、ここがプロの仕事の見せどころで、この煮っ転がしの大島優子さんがじっくりと二時間をかけて、金田美香さんクラスの可愛さまで引き上がって行ったのですから素晴らしいですよ。煮っ転がしから金田美香さんクラスですからね、キッチリとオーダーに応えたプロの仕事と言えるでしょう。それで劇中実際に AKB 48 というアイドルグループが存在して、ライブハウスらしき場所での模様が描かれるのですが、これが実際のライブ形式だったとしたら、わざわざ映画館に観に来ないかもわからんね、だって手の届くくらいの距離にアイドルがいて歌って踊って、さげすんだ目で見てくれるんですもの。そして「歌えば、死ぬ」伝染歌の真相を探るべく、自殺した女子の友達で AKB 48 のメンバーである秋元才加さんが登場します(アイドルとして)。この秋元才加さん、アイドルにしてはけっこうがっちりボディのアマゾネス系で、昼寝からの起き上がりシーンで浴衣ごしのパンツを披露されているのは、そういうのもアリなアイドルグループなのかなんなのか。そもそも”48”なんて絶対”四十八手”から来ているに決まっている(← 断定病)のだから、きっとメンバーそれぞれに体位があてられているに違いない(← 重度の断定病)。ですから大島優子さんはスタンダードな”茶臼がらみ”、秋元才加さんはかなりの確立で顔が怖いので、後背位の”碁盤攻め”でしょう(← 末期の断定病)。松田龍平さん伊勢谷友介さんが中心となる伝染歌を追うゴシップ雑誌『MASAKA(まさか)』。編集長が謎の金持ち堀部圭亮さんで、遊人さんがアングラ方面に詳しい元ストリートギャング(オイシイぜ)。小山田サユリさんは堀部圭亮さんの愛人でもありまして、エロ目的の上下黒ランジェリーにて、ソケイ部の美しいラインを披露しております、眼福。ホラーとかサスペンスとかでなく、「MASAKA」編集部が、都市伝説を追う物語として観ればそれほどズッコケないかなと。あと”遊人”と言えば可愛い女の子を縛り上げて乳首を洗濯バサミで挟み、全体にトロ味がかった漫画で私におなじみの”遊人”かと思って、けっこうドキドキしながら観てましたが、別人なのですね。ホッとしたような残念なような。都市伝説を警察も追いかけまして、キャリアっぽい役で中村靖日さんが登場。あいかわらずスーツに”着られている”パーフェクト・ボディ。もはや日本には中村靖日さんに合うサイズのスーツは存在しないのか。とりあえず衣装部にはありませんでした。パンフレット(600円)には製作時に不可思議な出来事が起きたとか書いてありますけども、録音素材に聞こえるはずの無い音が入っていたとか、そういった類のもの。向こうから来るパターンなのです、自らではなくて。ですから「歌えば、死ぬ」が本当かどうか歌ってみようというのは、芸が無さ過ぎますよね。しかも同じこと二回するんだから参ってしまう。あと学校であんなことが立て続けに起こっているのに、どこの馬の骨とも知らぬ男について行かせる親ってどうなの?みんなで一晩過ごすのですが、おのれの命がどうなるのかというのに、パニックになるわけでなく、ただいつもより食欲がなくなるだけというのは厳しい。そう「♪ああ うどんくらいしか 食べる気がしない」まさにこれで、こっちの歌の方がずっとずっとダウンしますよね。その伝染歌のルーツにたどりついたけども、入り口がグダグダだと出口もまたグダグダで、そこで明らかになるのが真相ならば、この世に未練があるのは、あの男性ではないのか。とブーブー文句言いたくなりますけども、”伝染歌”というキーワードはけっこういいですよね、もうひと練りしたらまだ使えそうな気がします。あと『 MASAKA 』編集部が都市伝説を追うスピンオフはアリかも知れないです。