粘着洗脳の可能性について。『恋空』

邦題:『恋空』

原題:

原液: 原作:

恋空〈上〉―切ナイ恋物語

恋空〈上〉―切ナイ恋物語

恋空〈下〉―切ナイ恋物語

恋空〈下〉―切ナイ恋物語

製作会社:ファインエンターテイメント

監督:今井夏木(『オレンジデイズ』『3年B組金八先生』)

脚本:渡邉睦月

主題歌:『旅立ちの唄』 Mr.Children

旅立ちの唄

旅立ちの唄

出演:新垣結衣 三浦春馬 香里奈 小出恵介 臼田あさ美 中村蒼 浅野ゆう子

日本公開:2007年11月03日(土) 

公式サイト:【http://koizora-movie.jp/index.html

まずアメブロアメブロ、獲ったな。2007年11月8日から新垣結衣さんのブログがはじまりました【http://ameblo.jp/yui-aragaki/】。いかんでしょ、現役で主演映画・ドラマやってるこのクラスの方がランキングに参加しちゃいかんでしょうと。このアメブロでゆるやかな人気を保っていた方々を一足飛びで上位にランキング【http://blogview.ameba.jp/content/notable/notable_rank.do?rank=1】ですから凄いわね。このタイミングですから『恋空』お客さんをごっそり連れて来たのでしょうね。さてこの『恋空』(読みは「こいぞら」と濁るぜ、はてなキーワードしっかり)は携帯小説が原作で若人に大人気だそうです。私は原作未読なので違いはわからないのですが”原作”というより”原液”ではなかろうかと感じました。とにかくエピソードが点々と続く印象。ケータイ → 図書室 → 花壇 → 夏休み → 飛行機雲 → 自転車 → 強姦 → フルボッコ → キャットファイト → 膣内射精 → 流産 → ホワイトクリスマス → 関西弁 → 難病 → 看病 → 死亡 → デジカメ → 日記 → 白鳩。はじめはレイトショーで観ようとしていたんですけど、タイミング良く朝一番の回を観れましたがこれが良かった。とにかくティーン近辺の女子がわんさと客席を埋めておりまして、ニヤニヤが止まらず、しかも彼女らのリアクションが思いのほか大きかったです。本編前の予告で『サーフズ・アップ』の声の出演に小栗旬さんの名前が出ると、客席のあちこちから「小栗旬だ」「小栗旬だって」との声が上がる。その前の『ザ・シンプソンズ MOVIE 』日本語吹き替え版の反応は薄かった。本編がはじまってからも前半は恋愛関係の面白めなシーンではドカドカ笑い声があがり、中盤以降シリアスというか呆気に取られる展開になったら客席はシンと静まりました。ははーんこりゃつまらなくて飽きたなと思っていたら、後半のあんなんなってこんなんなったら、あちこちからすすり泣きですよ、みんな観てたのね、集中してたのね、っていうか泣いとる!なるほどね。物語は先ほど記した展開で、どうしようもないと思うのですけど届いているんだから、商品としては非常に優秀ですよ。私は新垣結衣さんが出ているから観る気マンマンで、臼田あさ美さんがご自身のブログで出演されている【http://ameblo.jp/usuda-asami/entry-10054605639.html】と書かれていたので、まあこちらはチョイ役だろうと思っていたら、とんでもないメチャメチャ物語に関わってました。嬉しい反面、ドえらい役を引き受けたものだぜとも思いました。物語は駅のホームで誰やらに電話をかける新垣結衣さん「これから電車に乗るからね、え?迎えに来てくれるのありがとう」というシーンから始まり、ここから”7年前”の回想になります。終始、新垣結衣さんによる「あの頃は〜だったね」という呼びかけのモノローグが入りますから、多少ボケーッとしていても大丈夫だ。高校一年の夏休み直前、学校で携帯電話を無くした新垣結衣さん。友達にかけてもらって着メロで探そうと学校内をウロウロ。図書室にやっとあった!鳴ってる電話に出て友達にお礼を言おうと思ったら、それは知らない男性からの電話だった。慌てて携帯をいじくるとメモリが全て消去されている(!)。なんでこんなことしたんですか?と聞くと「本当にオマエを必要としているのなら、向こうから連絡してくるさ」と上からの物言い。もちろん怒って電話を切りますが、ここから夏休み中電話がかかって来まくる。新垣結衣さんも何故か着信拒否をしない、はじめはぶっきらぼうに答えていたけど、夏休みが終わる頃にはまんざらでもなくなってくる。つまり粘着の勝利。この夏休みのやりとりは、携帯を見つけた時の会話もそうだったように、終始上からのもので、わたしは「ははーん、これはホストとお客のソレを学園ものに置き換えているのだな」とわかったようなことを思いながら観続けるのでした。正体を明かさなかった男性でしたが、始業式の前にプールに呼び出され行ってみると待っていたのは金髪の三浦春馬さん。顔は知ってるくらいだった新垣結衣さん、あんましいい印象を持っていなかったので誕生日プレゼントの花束を「花がかわいそう」なんっつてプイとその場を去ります。帰り道、公園の花壇にしゃがんでいる三浦春馬さん、それに気付いた新垣結衣さんが近づくと、今朝の花束を花壇に戻して肥料まで撒いていました。どうせその肥料だって買ったんだかどうだか。その優しさにポーッとしてなっちゃった新垣結衣さん、ここを逃さず三浦春馬さんは調子よくホースで空に向けて水を撒き虹を作ってあげると、ご機嫌になる新垣結衣さんなのでした。このあと花のプレゼントが二回ありますが、かわいそうとか全く無し。夏休みの間電話をかけまくり、粘着洗脳を行なったわけですから、プールでお花を拒否されて、プイと行かれてもあきらめませんよ。こんなこともあろうかとシュミレーションしているわけですから、即座に作戦 B ”花壇大作戦”にて新垣結衣さん陥落(嗚呼、あなたという人は)。そんなこんなで付き合い始めた二人、ある日の授業中三浦春馬さんから図書室への呼び出しメールが入ってきます。自転車二人乗りで学校を抜け出す二人。ここでの三浦春馬さんのセリフがインパクト強し「天気がいいから、弁当買ってオレの家で食べよう」……?まったくつながっていないですけど、どうしたのか。天気がいいから、弁当を買うまではいいよ、そしたら景色のいい公園行くとか、とびきりお気に入りの場所(あの川原ね)へ連れて行くとかだと思うのですが、オレの家へ行こうってすごいな。粘着洗脳が効いているので、新垣結衣さんは疑問に思いません(嗚呼、またしてもあなたという人は)。三浦春馬さん家に着くと、お姉さんである香里奈さんがビッグスクーターでお出かけ。豹柄をまとった現役ヤンキーが見事にハマっとる、このあとも香里奈さんの登場シーンにはビッグスクーターがセットで付いてきます。部屋に入り、缶のお茶を開ける間もなくチュー。その先へ進もうとすると驚く新垣結衣さんに「もしかして、はじめて?」と三浦春馬さん。首を振る新垣結衣さんですが、このあと自らのモノローグで「こんなに優しい痛みがあるなんて知らなかったよ」とか言うので何故嘘ついたのか?二人が交わう場面は描きませんで、一戦交えたあと二人ベッドで寝ていてると新垣結衣さんが目を覚まします。二人とも制服は着たままで、シャツのボタンが外された程度、ふーんなんて思いました。起こさないようにこっそり帰るとその途中に三浦春馬さんから「寝ててゴメン。気をつけて帰れよ」的メールをもらいました。この扱い、新垣結衣さんの貞操を奪っておいてこの扱い。場面変わってバス停前の新垣結衣さん、携帯でだれやらと連絡しています。なるほどここで一旦回想シーンは終わって現在に戻り、電車が着いて迎えを待っているのかと観ていると、突然黒いワンボックスがやって来て拉致されてしまいます。ひと気のないお花畑の前で急停車すると、そこから新垣結衣さんが飛び出しまして、お花畑の中に逃げ込みますが、男たちに捕まって押し倒され強姦されてしまいます。デジカメでバシバシ撮ったりして、事が済んだ男たちは去り、お花畑でグッタリと横たわる新垣結衣さんを俯瞰で眺めますと、着衣の乱れはほとんどありません、下着ひとつ見えていない状態。またふーんとなりました。暗くなった道をトボトボ歩く新垣結衣さん、そこへ「美嘉(新垣結衣さん)ー!美嘉ー!」と叫びながら自転車をこぐ金髪の三浦春馬さん。えー7年たっても金髪で、車の一つも買えないのかよ、せめて原チャリ乗れよプププとなりました。姿を見るなりすべてを悟った三浦春馬さん「ゴメンな、お前を守ってやれなくて」と、犯人、まさに犯した人を速攻見つけ出しボコボコにします。ここでのデジカメに対する怒りが尋常でない、ここまでデジカメに怒りをぶつけた映画は今後出てこないのではないか。降参の一味は頼まれたのだと白状。三浦春馬さんの家で、香里奈さんに良い子良い子されていた新垣結衣さん。そこへ女性の「なんだテメー離せよコラー」の声とともに、臼田あさ美さん(!)が三浦春馬さんにひっぱられて登場。なんと元カノの臼田あさ美さんが強姦の支持を出していたのだと言うんです。そしてなぜか香里奈さんにねじ伏せられ髪をバッサバサ切られてしまいました。『 nicola 』と『 Ray 』の連合軍にメタメタにされた臼田あさ美さん、私はきっと『 AneCan 』から押切もえさんが、まさに姉のごとく現れ仕返しをしてくれると信じていましたが、そんなシーンは微塵もありませんでした。病院で検査したら妊娠してなくてよかった、でも学校へいく気にはならず、久しぶりに行ってみると黒板に”美嘉(新垣結衣)は誰とでもヤル 090-XXXX-XXXX ”とかいうショッキングな落書きが何クラスも書かれていましたよ。……と、言うことはこれは回想シーンの続きなのか、まぎらわしいな。怒りまくりの三浦春馬さんが消しまくりのさらに怒りまくり。教卓を蹴り飛ばし、見て見ぬ振りをしているクラスのみんなに向かって「今度やったら、絶対ぶっ殺す!」と絶叫。……?今度やったら?これは許す。と、わたしここでピーンと来ました。これは前半で思い込んでいた「ホストとお客のソレ」ではなく、本当の”リアル”な若人たちの物語なのだと。だって強姦は許せなくて、誹謗中傷は許すという明確な線引き、こんな立ち位置が明確な映画は今後出てこないのではないか。だって強姦の犯人はあっという間に捕まえたわけで、この黒板の一件なんか、探そうと思えばそれこそあっという間もかからないはずなのに。「今の若人はいつキレるかわからないから怖い」なんて言ってる大人のみなさんは『恋空』観たらいいです、この境目でキレますのよ。しかも黒板消しのあと、そのまま図書室に行った二人は床上で交わい膣内射精、結果妊娠ですからね。ここでもピーンと来ましたよ、なぜ初めてのとき二人は着衣姿だったのか。若人たちは前戯も後戯もしないんですよ、膣に陰茎を挿入することのみが目的なんだ。だから強姦されたときも脱がされなかったんだぜ。わたしなんて俳優の相武紗季(あいぶさき)さんについてお喋りするとき、相武 → 愛撫 と脳内エロス変換をしてしまい、半笑いでの会話になるのです(相武紗季さんファンのみなさんゴメンナサイ)。でも若人たちは愛撫という行為自体がないので、ノープロブレム。愛撫が無いから、それこそライオンの交尾のように短時間で終了するんだろうね。ここが理解できてからは物語にすっかり没頭。三浦春馬さんが連れて行ってくれて、二人にとって思い出の場所になる川原は、三浦春馬さんが初めて人をボコボコにした場所というね、ここで二人だけの結婚式をあげるんだよ。すごいな。「オレ、死にたくない!」はスクリーンと完全に同調したよ。そんな映画『恋空』でした。気になるところは、いわゆる”予定調和”、”ご都合主義”とこちらが感じてしまう描写が、若人たちにとっては”リアル”( ← 言い方は違うかもしれませんが)になってしまっているのかなと。自分達が真剣ならば何をしても許される、親だって本気で話せば想いが通じる(思い通りになる)ってのはちとマズイぜ。夜中に病室でわめき散らしたら、看護婦さんが飛んでくるのは”リアル”じゃないんだよ。だって思いのたけを本気で叫んでいるのだから。人が死んだらお葬式行って、火葬場行って、お墓参りして、掃除して草むしりするのは”リアル”じゃないんだよ。思い出の場所に行くのが”リアル”なのね。それから”純愛”に膣内射精を含めてんだろ?これは著名人の「できちゃった結婚」の影響だと思うんですけど、彼らは既成事実を作らないと結婚できないという特殊な状況にいる人たちで、「できちゃった」んじゃなく「こさえた」のに、ここを取り違えちゃいけない。まさか避妊が”純愛”にそぐわないというのが常識になりつつあるのかしら?しかし、この物語が届いているんです、ティーンの女子が劇場に押しかけてワンワン泣いとるわけです。そういったアレコレを嘆いている大人のみなさんは、嘆いてばかりいても仕方ない、これを上回る娯楽に道徳・常識を含めた作品を世に問うてほしいものです。とは申しましても、新垣結衣さんはずーっと出てくれまして、その可愛さは尋常ではありません。特に夏休みの風呂上り、冷蔵庫をあさるシーンでの、おでこやらほっぺやらの曲線が冷蔵庫の室内灯に照らされる姿は眼福。臼田あさ美さんも、インパクトのある役で印象に残ります。……ってヒール過ぎるぜ、ラストは多少救いがあるというか、そのかわり眉毛が無いというか、とにかく頑張りました。それからパンフレット(500円!ティーンに優しい価格設定)では主題歌『旅立ちの唄』を歌う Mr.Children桜井和寿さんがメッセージを寄せていまして、この唄は『恋空』を読んで作った唄じゃないよと何故か強調していました。これはうるさ型のファンに対する牽制なのかなんなのか。でも原作を読んでみたら唄との共通点が多くあったそうです。どんなことでしょうか?ギリギリガールズに関することでしょうか?きっとそうだ、我々からギリギリガールズを奪ったあの日を決して忘れない。細かいことは忘れましたが、大ざっぱには決して忘れません。