なぜ亀山千広さんがあそこまで体を張ったのか。『少林少女』

邦題:『少林少女 SHAOLIN GIRL 』

原題:『少林少女 SHAOLIN GIRL 』

製作会社:フジテレビジョン

製作総指揮:亀山千広 チャウ・シンチー

監督:本広克行(『踊る大捜査線 THE MOVIE 』『 UDON 』)

脚本:十川誠志 十川梨香

出演:柴咲コウ 中村トオル 岡村隆史 江口洋介 キティ・チャン 山崎真実 乙黒えり ラム・ツィーチョン ティン・カイ・マン 

日本公開:2008年4月26日(土)

公式ブログ:【http://www.shaolingirl.jp/blog/

IMDb:【Shôrin shôjo (2008) - IMDb

「これって『少林サッカー』の”サッカー”を”ラクロス”にかえただけでしょ?」という第一印象を楽々と下回る作品。ヤバし。初日の初回に観たのですが、お客さんは20人くらい。でもエンドクレジットが終わるまで席を立つ人は少なかったです、内容はどうあれぎっしり最後まで見せてくれます。物語はこんな感じ。3000日におよぶ中国での少林拳の修行を終え、その成果を広めるべく故郷に戻ってきた柴咲コウさん。今は亡き祖父である師匠の道場へ向かうが、ひと気もなくすっかりさびれていた。街に戻りかつての道場生たちを訪ねるが、みな少林拳をやめてしまっていた。そんなとき江口洋介さんの中華食堂でアルバイトする、中国からの留学生キティ・チャンさんと出会い、大学のラクロス部に入る代わりに少林拳を教えることになる。…と、こういうすべり出しなんですよ。タイトルクレジットが格好良くて燃えるし、こうして仲間を見つけて少林拳の修行をラクロスに応用して、すげえことになるのかとワクワクしながら観てました。しかし、このキティ・チャンさんが、ボロボロの道場で寝泊りする柴咲コウさんを心配して訪ねて来たシーンからおかしくなる。日課である太極拳をしているキティ・チャンさん、その前に立った柴咲コウさんが少林拳のすじを確かめようと「(腕を)思い切り蹴ってみて」と(日本語で)言います。キティ・チャンさんはポフッと軽い蹴りを入れると柴咲コウさんは「そうじゃなくて、もっと強く、思い切り」と(日本語で)言うのです。ここで「おや?」と、柴咲コウさんは3000日という長期間中国へ行っていて、言葉も出来るのになんで日本語オンリーなのかと。日本語のニュアンスが通じなかったら、中国語で言ってみるのが自然じゃないかしら。中国は広いからいくつも言語があるようですが、ここはお互い日本と中国の言葉でやりとり出来るってことにしておかないとまずいだろうと(それで絆を深めると、後半のあの行動も効いてくるのに)。結局柴咲コウさんは、中国での修行から帰ってきて小学生に話しかけて以降は全て日本語なんですよ、キティ・チャンさんはカタコトの日本語。なんだこれ。ここでほんのりと「ヤバ臭」がしてからはグダグダの展開。”小ネタ”も”パロディ”も”オマージュ”も”カメオ出演”も土台がしっかりしていてこそ活きると思うんですよ。ラクロスにしても、このチームは強いのか弱いのか、なにか問題を抱えているのか、いきなり外部の人間を連れてきて波風立たないわけないものね。キャプテン役の山崎真実さんも、ポロシャツの下からややおっぱいを強調する以外にこれといった見せ場が無いし、乙黒えりさんは、まあもとからそんな重要な役どころではないか。その他のラクロス部員たちも特にこれといった活躍はなし。見せてもいいパンツはいてがんばっていたというのにこの仕打ち。悪役というか、敵役もなにがしたいのかわからないし、軽いどんでん返し(まさかあの人が敵だなんて)も特に信頼関係があったわけじゃないので弱い。少林拳は相手を傷つけるためではなくて、己を鍛えるためだ、だから戦わない。っていう前提があったようですがよく伝わってきませんで、だから痛めつけられて→がまん→痛めつけられて→がまん→痛めつけられて→もうかんべんならねえ!となったときに観ているこちらはそれにあんまし乗っかれませんでした。そもそも”少林拳”と”ラクロス”がうまいこと融合するのは、すべて終わったあとってなんなのか。あーネタバレしちゃった。テヘ(舌出し)。でもあっけに取られて帰宅後に見た『めちゃ2イケてるッ!』でやっていた『少林少女』の「熱湯コマーシャル」が面白かったのでちょっと回復しました。製作総指揮の亀山千広さんがあそこまでやったのは、完成した『少林少女』を観てなんらかの危機を感じたからなのかどうなのか。ヒットすれば岡村隆史さんのスピンオフ『少林ちっちゃいおっさん』に近づきますが、くちコミではきびしそうですね。