”ファック”について『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』

タイトルに”の”が入ればヒットする法則に乗っ取った邦題でお送りする、トミー・リー・ジョーンズさん監督・主演の”男”に関する映画。まあ確かに原題が『 The Three Burials of Melquiades Estrada 』ですから、そのまんまなのですが、覚えづらいったらありゃしない。作品の内容は「トミー・リー・ジョーンズさんを絶対に怒らせてはいけない」コレに尽きます。英語圏で無闇に使ってはいけない言葉に”ファック”というものがあります。本来は性交の俗語なんですけど、映画の中では、くだけた会話のアクセントで使われることが多いでしょ?強調したり、毒づいたり、そのニュアンスを拾っていくのはなかなか難しいのですが、この作品で「これはファックだなあ」と強く感じるシーンがありました。国境警備隊バリー・ペッパーさんが、夕飯の準備をしている奥さんのジャニュアリー・ジョーンズさんを後ろからファック(これは性交の意)する場面。バリー・ペッパーさんのなんとも身勝手で自己中心な振る舞い(白目ひんむきメソッド)と、つまらなそうに受け入れるジャニュアリー・ジョーンズさんのあきらめに似た遠い目。このどうしようもなさに当てはまる言葉は”ファック”(ニュアンスとしての)なんですよねー。ここは別におっぱいが出たりするウハウハシーンではありませんので念のため。

乾ききった荒野に、調子っぱずれのピアノが奏でる『別れの曲』が染み入ります。男子必見の傑作。女子は各自の判断で。