大きな芝居を大きな画面で。『犬神家の一族』

……素晴らしい。映画なんてものは所詮現実逃避ですから、いくばくかのお金払って二時間ばかり浮世を忘れさせてくれるってのが私にとって一番なんですけど、『犬神家の一族』のように観終わってからも余韻が続く作品に出会うと、ますます映画館通いはやめられねえとなるわけです。市川崑監督、石坂浩二さん主演で30年ぶりにリメイクですよ、市川崑監督は91歳(1915年生まれ!!)ですって。そんでこのリメイクされた『犬神家の一族』はカット割りから台詞からほとんどオリジナルと同じらしいんですよ。もちろんオリジナル(1976年版)も観てますから、犯人もわかってるもんねーと楽勝ムードで劇場のシートに身を預けて鑑賞しましたけど、やっぱし怖い、立派なお屋敷って怖い。オリジナルと同じように撮影して、主役は石坂浩二さんでしょ、なんで今この時代にやるのかしら?とちょっと思っていましたけど、それはラストシーンで明らかにされるんですよ。……素晴らしい、もうあれをみせられたら「こちらこそ」であとは涙々だで。市川崑監督は91歳ですからね、いままでのキャリア以上の作品数を作り出せるかと言ったら否でしょう。だからこういう形で一つのシリーズに幕を引いたんですね、これに立ち会えたことは幸せですよ。